TYM344は、自身が提唱する「二値化絵画」という手法のもと、美術史・映画史・音楽史等からの引用、自身が描く漫画のキャラクター、路上で採取した標識や看板等のイメージといった要素を組み合わせて様々な絵画画面をつくる作家です。当ギャラリーでは2019年に開催された内田ユイとの2人展『SKIP TRACER』以来の出展となります。
今回の個展『レジャー(LEISURE)』では、従来からのキャンバス作品に加え、看板・標識の構造にヒントを得た新作や、壁を覆うような大作も登場します。皆さまにご高覧いただければ幸いです。
TYM344 個展「レジャー(LEISUR)」
Exhibition Statement
――毎日彼女の顔を見る。
(Blur《She’s So High》(1990)より)
レジャー、なんとあっけらかんとした平和な響きだろう。レジャーとはもともと余暇や自由な時間のことで、さらにはそのような時間に行う活動のことも指すが、それはまさしく不要不急として名指しされるようなものでもあるだろう。レジャーというちょっと古くさい言葉から喚起させられるのは、昔ながらの移動、ここではないどこかへのちょっとした旅を伴うものであるように思われる。物理的な移動には、目的地までの道のり、つまり必ず過程を伴うが、その過程にはたくさんのイメージたち、つまり看板や標識が存在している。
あらゆるイメージが動画化していく現代の世界のなかにおいて、絵画の新しい意義は「動かないこと」なのではないか?と仮定し、そのテストを続ける私にとって、24時間365日変わらずに同じイメージを明確に提示しつづけている看板や標識はいつも制作の手本になっていて、研究のために日夜そのイメージを採取し続けている。そのとき、私はまさしく路上、つまり実際的な<過程>にいる。そのことに気がつくと、その実際的な<過程>が、<確定>を体現している看板や標識の構造や在り方と関係していることも分かってくる。旅の目的に至る<過程>に必然はなく不安定なもので、まさしく余暇の本質はそこにこそあると思うが、そこではたくさんの<確定>に出会う。いまはその出会いそのものから仕事に取り掛かりたい。
Artist
TYM344 | ティー・ワイ・エム・スリー・フォー・フォー
美術家。東京都生まれ。
早稲田大学第一文学部総合人文学科美術史学専修卒業。
「絵を描くこととは、決定された画像をつくること」として、道路標識から秩父連山まであらゆる不動物を手本にして、二値化された非・動画的な絵画を目指す。現代における絵画の絵画性とか、古くさいことを考えています。
主な個展:
「EYE KNOW EYE LOVE YOU BETTER」(THE blank GALLERY, 2020年)
「HARD/SOFT」「NEVER UNDERSTAND」(ナオナカムラ, 2017年)
「サブスタンス」(新宿眼科画廊, 2015年)他。
出版物:
『わかりたい! 現代アート』(著/布施英利・画/TYM344、光文社知恵の森文庫)
『絵画検討会2016-記録と考察、はじめの発言』(アートダイバー社)など。
ARTWORK
レジャー | Leisure Acrylic on canvas | 90x90cm | 2021]
スニーカーを履いた黒の正方形|Black Square In Sneakers Acrylic on wood board,sneakers | 84.5×79.5x30cm | 2021]
空港アイ|Airport Ai Acrylic on canvas | 90x90cm | 2021